VACAL®（バッカル）

［VACAL-OX・VACAL-SAL］

概要
特長
仕様

概要

「VACAL®(バッカル）」は、アルミニウムおよびその合金上にアルマイト皮膜を成膜するものであり、クラックの発生を極めて少なくすることを可能にした表面処理です。

その応用例として、高温度でのプラズマ雰囲気にさらされるアルミ合金部品に対し、反応性ガス中でスポーリングの発生を抑え、皮膜の長寿命化・パーティクルの低減を実現できます。「VACAL®（バッカル）」には硫酸系のVACAL®-SALと、蓚酸系のVACAL®-OXがあります。

※VACAL®はアルバックテクノ株式会社の登録商標です。

クラックが少ない

「VACAL®(バッカル）」は、従来の硬質アルマイト皮膜と比べ、クラックが非常に少なくなっています。

皮膜表面の拡大写真　常温でのクラック比較

皮膜表面の拡大写真　熱負荷後クラック比較

（材質：A6061　膜厚20μ　封孔なし　大気熱処理　400℃　　２時間保持　／倍率100倍）

熱が加わってもアルミとアルマイト（Al2O3）における熱膨張係数の違いから生じるクラックも少なく抑えられています。

膜のつきまわり

複雑な形状の部品でも、つきまわりが良く成膜されます。また、シャワープレートなどの細穴でも、角部を含め均一に成膜されます。

皮膜のつきまわり性

コンタミネーション

半導体や電子部品の製造工程で重要視される重金属について、AES、SIMS、ESCA、EMPA^※の分析結果では、重金属成分は検出限界以下です。

※ AES：オージェ電子分光法（AugerElectronSpectroscopy）
　 SIMS：二次イオン質量分析（SecondaryIonMassSpectrometry）
　 ESCA：Ｘ線光電子分光法（ElectronSpectroscopyforChemicalAnalysis）
　 EMPA：電子線プローブ微小部分分析法（ElectronProbeMicroanalyzer）

皮膜硬度

アルミ素地にVACAL®（バッカル）処理を施すことで表面硬度が向上し、工具接触時などの不用意な傷の発生も少なくなります。

特長

従来型硬質アルマイトとVACAL®（バッカル）の比較

		硬質アルマイト	VACAL®-SAL	VACAL®-OX （A5052）	VACAL®-OX （A6061）	備考
成膜範囲		10～50µ	10～30µ	30µ	30µ
発色		母材色→黒色	母材色→灰色	金色（黒系）	灰色（青系）
硬度(HV)	表面	約400	約370	約400	約300	膜厚30µ
硬度(HV)	断面	約370	約360			膜厚30µ
表面粗さ(Ra)		加工状態による	加工状態による	加工状態による	加工状態による	最適化なし
表面粗さ(Ra)		－	1.3～2.2µ	1.3～2.2µ	1.3～2.2µ	最適化あり
クラック	成膜直後	○	◎	◎	◎	圧延材の場合
	加熱後	×	○	◎	◎	400℃炉冷
	封孔+加熱	×	△	×	×
耐摩耗性	テーバー摩耗試験	10ｍg以下	10ｍg以下		10ｍg以下	10000回転
放出ガス量	封孔なし封孔あり封孔+400℃48hr		○ △ ◎		◎ × ◎

NF3プラズマ暴露試験

アルマイト皮膜をNF3プラズマに曝した後、EPMAにて分析しました。結果からアルマイト表面のクラック部分に｢Ｆ｣が検出されていることがわかります。反応性ガスはクラック部分で「AL」と反応し、これがパーティクルの発生に繋がると考えられます。

通常、アルマイトは成膜時および加熱時に多量のクラックが発生します。

クラックの発生を極限まで抑えたVACAL®（バッカル）は、パーティクルの発生を抑え、保護皮膜としての長寿命化を実現しました。

表面写真比較

成膜直後に比較するとVACAL®（バッカル）表面はクラックの数が硬質アルマイトと比べ格段に少ない。熱が加わると素地のアルミ、アルマイト皮膜（AL2O3）熱膨張係数の違いによりクラックが増加するが、VACAL®（バッカル）の場合クラックの発生は認められるものの、硬質アルマイトと比べ増加傾向が全く異なります。

仕様

CVDやエッチング装置用の電極、防着板、シャワープレート、ベースプレートなどの真空構成部品、一般電子部品などの耐食性・耐久性の向上に適しています。

VACAL®処理説明

項目	内容
最大処理寸法 mm(superscript:^＊2)	硫酸系	SAL	800(W)×4500(L)×4000(H)
最大処理寸法 mm(superscript:^＊2)	蓚酸系	OX	500(W)×1150(L)×1100(H)
適用材質	Ａ５０５２、Ａ６０６１
膜厚	SAL：15～30μ　　OX：20～30μ
膜厚公差	指定膜厚に対し±10μ
マスキング	個別指示により対応可能^＊２
成膜前処理	マスク面を除き最適化処理を実施〔仕上り表面は若干梨地状〕
成膜後処理	沸騰水封孔、加圧蒸気封孔
洗浄・包装	別途、ご指示により、精密洗浄後に脱気二重包装可能

^＊1：処理可能サイズは材質、重量、形状等によりできない場合もありますので、ご相談ください。

^＊2：マスキング箇所の数量や難易度によっては、処理日数が長くなる場合があります。

^＊：ベーキング（真空加熱脱水処理）も可能。別途お問合せください。

注意1：VACAL®（バッカル）処理をする上でラック（電極保持）位置が必要となります。また、ラック部分には成膜されませんので、打合せにより、位置決定が必要です。

注意2：アルマイト処理（VACAL®処理・TUFRAM®処理）について異種金属の組込み（ヘリサート等の挿入や鉄ビンの圧入）がある場合は、アルマイト処理時に溶解してしまいますので、必ず除去してご依頼ください。圧入などで取り外しができない場合は、マスキングで対応できる場合がありますので、事前にご相談ください。

VACAL®(バッカル)仕様記号例

記号一覧表

項目	記号	内容
封孔	W	沸騰水封孔
	V	加圧蒸気封孔
	N	封孔無し
膜厚	単位を除く数値	10～30µ
最適化処理	０	無し
最適化処理	１	有り
ベーキング	０	無し
ベーキング	１	有り
洗浄・包装	A	精密洗浄後に２重真空パック
洗浄・包装	B	洗浄無しビニール包装